ドイツ化学大手のBASFのマルクス・カミート最高経営責任者(CEO)はこのほど、インフレの持続的な上昇に加え、中東紛争に起因するサプライチェーン途絶のリスクにより、自動車産業ひいては経済全体の見通しは楽観視できないとの見解を示した。
カミート氏はフランクフルトで開催されたメディア懇談会で、各種原材料の不足リスクが継続的に高まっており、自動車のような複雑に連関する精密なサプライチェーンは、これにより生産停止に追い込まれる可能性があると述べた。また、中東地域の紛争により、硫黄やヘリウムなどの工業原料の供給が逼迫していると指摘した。

BASFは世界の自動車産業にとって中核的な化学サプライヤーであり、完成車メーカーやその関連企業に対し、塗料、プラスチック、触媒、バッテリー材料、各種化学品を提供している。自動車産業は数万点に及ぶ部品と世界中に分散した原料調達源を持つため、基礎的な化学原料が不足すれば、完成車の組立ラインが停止する事態を招きやすい。
カミート氏は、「これが私が今年下半期に予想する業界の下方リスクであり、各種原材料不足の懸念が徐々に顕在化している。将来的に特定の原料が完全に供給停止となる可能性も排除できない」と述べた。
BASFのCEOによる今回の発言は、中東紛争がもたらす連鎖的な影響を予測することがいかに困難であるかという、各国の政策立案者や企業が直面する課題を浮き彫りにしている。フォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツなどの自動車メーカーの調達チームは関連影響の低減に全力を挙げているが、化学や金属といった上流の基礎原料段階で生じる供給問題は、初期段階では往々にして認識しにくい。
ドイツのルートヴィヒスハーフェンに本社を置くBASFは世界トップクラスの化学企業であり、生産拠点は世界中に広がっているため、地政学的な紛争が事業に与える影響は特に顕著である。BASF傘下の欧州工場は現地の自動車サプライチェーンと深く結びついており、同社は最近、中国にも大規模な新生産拠点を完成させている。
